前回の続きで、今回も「経理って会社でどんな仕事してるの?」という疑問に答え、実際の経理職の職務内容について、ご紹介していきたいと思います。
前回の記事はこれ。
9つの業務の内、今回は6~10番目までの仕事を順番に見ていきましょう。
経理としての業務の内、今回ご紹介するのはかなりレベルが高く、より高度な知識と経験が求められます。
6、会計ソフトへの仕訳・記帳
経理は日々の現金のやり取りや売上・支払いの管理をしていきます。
その日々の取引内容を記録するのが「簿記」です。
簿記は企業会計の原則やルールに基づき、日々の取引内容を簿記のルールで仕訳・記帳していくのですが、その際に使用するのが「会計ソフト」です。
テレビCMや広告でよく紹介され、有名な会計ソフトは
などがあります。
企業の中ではこういった記帳業務を会計事務所や記帳代行会社に外部委託しているケースもありますが、社内の経理が行う事もあります。
会計ソフトへの記帳業務は、1件1件を仕訳していくので会社規模が大きければ大きいほどその作業量が多くなります。
また取引内容によっては、固定資産の取得・売却など滅多に発生しないような取引も発生しますので、この業務を行う場合は簿記の知識と仕訳の経験を持っておく必要があります。
経理未経験で、簿記もよく理解していない人がいきなりこの仕事をするのは難しいので、ある程度のスキルを積んだ経理が行う仕事であると言えるでしょう。
個人的な観測としては、こういった会計ソフトの記帳業務を外部に委託していたとしても、会計ソフトの使い方やその内容については熟知していたほうが良いでしょう。
なぜならこれから紹介する業務内容にはその知識の理解が必要だからです。
7、月次決算業務と財務諸表の作成
通常、会計ソフトへの仕訳・記帳業務は、1か月間を一つの区切りとして行われます。
この1か月間の利益と損失の状況、現金の状況などを集約し情報をまとめるのが「月次決算業務」です。
月次決算業務では、以下の書類を作成していきます。
各書類が何を表すものかは、また別の機会で詳しくお話していこうと思いますが、簡単に言うと
となっています。
月次決算業務は、この各書類(財務諸表と言います)の1か月間分を作成していきます。
この財務諸表は、経営陣への経営判断の資料として使用されることとなります。
また、この後紹介する財務業務にも生かされることとなります。
この財務諸表を作成する際、経理はただ作ればよい訳ではありません。
その財務諸表で企業の成績や現金の状況を詳しく判断し、経営陣に助言を行っていくのもレベルの高い経理の仕事です。
経理として、このレベルにまで自分を高められるかどうかが大成するカギとなっていきます。
8、決算時の税務申告書作成
企業は、必ず事業期間というものが定められています。
事業期間とは、開始日から終了日までの1年間の期間のことで、終了日を迎えると、1年の「決算」を迎えることとなります。
決算とは、簡単に言うと事業期間内の経営状況を計算することのことです。
これで年間の財務諸表を作成し、税務申告作業へと作業が移行していくこととなります。
企業は、一年間の経営状況の数字によって収める税金があります。
企業が納める税金としては、
など様々なものがありますが、大まかに言ってこれらは全て1年間の事業の結果に基づき算出されるものです。
これらの税金を申告書という形で算出し書類を作成し、税務署等の各機関に提出し、税金を納める。
これが税務業務です。
大抵の企業ではこれらの業務を会計事務所・税理士事務所に委託することが多いようですが、もちろん企業内で作成する事例も多くあります。
企業内に税理士資格を持っている人がいれば、その人にお願いするということもあるでしょう。
この申告書類は、最終的に税理士のお墨付きを貰うことが多いのですが、その内容のほとんどを作成するのが経理、ということもありますので、実際に作成する機会が無くても基本的な要素だけは押さえておいたほうが良いでしょう。
ちなみに筆者はただの企業の経理ですが、グループ4社の税務申告書類の中身を作成する担当者になっていますので、税理士ではありませんが税の知識をそれなりに持って、また経験も積んだ状態で仕事をしています。
経理として、この状態までにレベルを高めておくと、どの会社に行っても食いっぱぐれる事はないのではないでしょうか。
9、与信情報の審査・管理
経理の仕事の一つとして、新しい取引先や外注先を選定するにあたってその企業の経営状況を調べる「与信審査」というものがあります。
売上を上げる会社ならば、売掛金の回収が見込めないような会社とは取引できませんし、外注先ならば簡単に経営破綻するような企業であれば外注に出すことも出来ません。
この「与信審査」は別名「経営分析」とも呼ばれ、よその会社がどういった経営状況なのかを調べる作業となります。
審査・分析を行うにあたって必要な材料は「財務諸表」です。
普通、よその企業には要求されない限り、自分の会社の情報を提供することはありあせんが、仮に要求されても、すべてを渡すわけにはいきません。(なぜならその情報こそがその会社の生命線ですから)
その中でも、金融機関や税務署等に提出することがある財務諸表は比較的提供してもらい易い資料になりますので、それを受領し、この財務諸表から経営状況を分析し、読み取っていきます。これが与信審査です。
その分析の手法に関してはまた別の機会にお話していきたいと思いますが、取引先の経営状況を分析したり、営業部門に取引上のアドバイスを行っていくのも経理の業務の一つと言えます。
10、財務業務 ※財務部門が別に存在する場合はなし
中小企業には、「財務」と呼ばれる部門が存在しないことがあります。
財務とは、簡単に言うと「現金の資金繰りを管理する業務」のことです。
運転資金や固定資産の取得等で現金が不足しそうな状況をいち早く察知し、金融機関に働きかけ、融資をしてもらう、という行動を起こすのがこの財務ですが、小さい企業はおおよそ社長または取締役がその責を担っていることが多いです。
もう少し企業規模が大きくなると、財務業務は経理がその業務を担うことが多くなります。資金繰りや現金管理を直接行っているので、非常に都合が良いという訳です。
ですがこの財務、一歩間違えて現金が不足するとと支払いが滞ったり、借入金の返済が出来なくなって不渡りになるような状況にさせてしまうこともあるので、細心の注意が必要です。
ともかく、経理の仕事は細心の注意と高度なスキルを駆使して業務を行わなければならないと心得ておくのが良いでしょう。
以上、今回は経理が会社の中でどんな仕事をしているのかご紹介してきました。
これから経理に転職・配置転換する人や、新社会人で経理として就職する人、また経理職として今後どんどんスキルを上げていきたい人に参考になるような情報をお伝えしたつもりです。
また別の機会に、それぞれの業務について深くお話する機会を設けたいと思いますので、皆様お楽しみに!